住み慣れた自宅に住み続けながら、売却代金を得ることができる「リースバック」。老後資金の確保や住宅ローンの完済など、さまざまな目的で利用者が増えています。
しかし、リースバックは単に不動産を売るだけではありません。売却時には諸費用や税金が発生し、売却後には家賃の支払いも始まります。「手元にいくら残るのか」を正確に把握しておかないと、資金計画が狂ってしまうリスクもあります。
本記事では、リースバックの利用時にかかる初期費用から、引渡し後の維持費、発生する可能性のある税金までを網羅して解説します。
1. リースバック売却時にかかる初期費用
まずは、物件を売却して契約を結ぶタイミングで発生する費用を見ていきましょう。これらは売却代金から差し引かれるのが一般的です。
仲介手数料
リースバック会社と直接取引する場合は不要ですが、仲介会社を通して契約する場合は「仲介手数料」が発生します。上限額は「(売却価格の3%+6万円)+消費税」となるのが一般的です。
事務手数料
多くのリースバック会社では、契約手続きに伴う事務手数料を設定しています。金額は会社によって異なりますが、5万円から10万円程度、あるいは売却価格の数パーセントと設定されているケースもあります。
印紙税
不動産売買契約書に貼付する印紙代です。売却金額に応じて納税額が決まります。2024年現在の軽減税率を適用した主な税額は以下の通りです。
| 売却金額 | 印紙税額(軽減税率適用時) |
|---|---|
| 1,000万円超 ~ 5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超 ~ 1億円以下 | 30,000円 |
抵当権抹消登記費用
住宅ローンが残っている状態で売却する場合、金融機関が設定している「抵当権」を抹消しなければなりません。この手続きを司法書士に依頼するための報酬と、登録免許税が必要です。概ね3万円から6万円程度が相場となります。
2. リースバックに関わる税金の詳細
不動産を売却した際、利益(譲渡所得)が出た場合には税金がかかります。算出式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得税(所得税・住民税)
売却価格から「取得費(購入時の価格)」と「譲渡費用(売却にかかった費用)」を差し引いた結果、プラスになった場合に課税されます。
ここで重要なのが、居住用財産の3,000万円特別控除の特例です。自宅を売却する場合、利益が3,000万円までであれば非課税となる仕組みです。多くのリースバック事例では、売却価格が購入価格を下回るか、利益が出ても3,000万円以内であるため、この税金が発生しないケースが多々あります。
ただし、親族間でのリースバックなど、特殊な関係性での取引では特例が適用されないこともあるため、事前の確認が推奨されます。
3. 売却後に継続して発生する費用
リースバックの最大の特徴は、売却後も「賃借人」として住み続ける点にあります。そのため、所有者だった頃とは異なる費用負担が発生します。
毎月の家賃
売却後は、リースバック会社に家賃を支払います。この家賃設定は、周辺の賃料相場よりも「売却価格」に基づいて算出されることが多いです。一般的には、売却価格の年利6%から10%程度を12分割した金額が月額家賃の目安となります。例えば、2,000万円で売却し、想定利回りが8%の場合、月額家賃は約13.3万円となります。
敷金・礼金
通常の賃貸借契約と同様に、敷金や礼金が必要になる場合があります。ただし、リースバック専用のプランではこれらを無料としている会社も多いため、比較検討が重要です。
家賃保証会社への保証料
多くのリースバック契約では、家賃保証会社への加入が条件となります。契約時に月額賃料の0.5ヶ月から1ヶ月分程度、その後1年ごとに1万円程度の更新料がかかるのが一般的です。
火災保険料(借家人賠償責任保険)
所有者として加入していた火災保険は解約し、新たに「借主」としての火災保険に加入し直す必要があります。これにより、家財の補償や大家さんへの賠償に備えます。
4. リースバックで支払いがなくなる費用
逆に、売却することによって負担がなくなる費用もあります。これらを差し引いて、毎月の収支を計算しましょう。
- 固定資産税・都市計画税:所有権が移転するため、毎年春頃に届く納税通知書への支払いがなくなります。
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合):原則としてリースバック会社(新所有者)が負担します。※契約内容により借主負担となるケースもあるため、契約書の確認が必須です。
- 建物の修繕費:給湯器の故障や外壁塗装など、建物の維持に必要な大きな修繕は所有者であるリースバック会社が行うことになります。
5. 費用を抑えるためのチェックリスト
リースバックを検討する際は、以下の表を参考に各社の条件を比較してください。特に初期費用と維持費のバランスが重要です。
| 検討項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 仲介手数料の有無 | 直接買い取り型の会社を選べば、売却価格の約3%分を節約できる。 |
| 家賃の更新料 | 契約更新のタイミングで事務手数料や家賃の値上げがないか確認する。 |
| 再購入(買戻し)価格 | 将来買い戻す可能性がある場合、売却価格との差額がいくらになるか確認する。 |
| 修繕負担の範囲 | エアコンや給湯器など、消耗品の修理をどちらが負担するか明確にする。 |
まとめ:トータルコストで見極める
リースバックは、一時的にまとまった現金を手に入れながら生活環境を変えずに済む、非常に便利な仕組みです。しかし、初期費用や毎月の家賃負担を軽視して進めるのは避けるべきです。
特に「家賃」は長く住めば住むほど、累計の支払額が売却代金を上回る可能性もあります。売却代金がいくらになるかという点だけでなく、諸費用を引いた後の「手残り金額」と、退去時までに支払う「家賃の総額」をシミュレーションすることが成功の鍵です。
ご自身のライフプランや将来の買い戻し希望の有無に合わせて、無理のない契約条件を提示してくれる信頼できるパートナー会社を選びましょう。まずは複数の会社から見積もりを取り、今回解説した各項目を比較することから始めてみてください。
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