老後の資金確保や住宅ローンの完済、事業資金の調達など、さまざまな理由で注目されている「リースバック」。自宅を売却して現金を得ながら、そのまま賃貸として住み続けられる画期的な仕組みですが、最も懸念されるのが「毎月の家賃(リース料)」です。
リースバックの家賃は、一般的な賃貸物件の相場とは決定プロセスが大きく異なります。この記事では、家賃が決まる具体的な仕組み、計算式を用いた算出方法、そして提示された価格が適正かどうかを判断するためのポイントを詳しく解説します。
リースバックの家賃相場が決まる仕組み
通常の賃貸物件であれば、近隣の似たような間取りや築年数の物件を参考に家賃が決まります。しかし、リースバックにおける家賃設定は「周辺相場」よりも「投資利回り」が優先されます。
リースバック運営会社は、不動産を購入する投資家としての側面を持っています。彼らにとって、家を買い取るために支払った代金は「投資した資本」であり、そこから得られる家賃は「投資に対する収益」となります。そのため、物件の売却価格に対して、年間で何パーセントの利益が得られるかという視点で家賃が算出されるのです。
なぜ周辺の家賃相場より高くなるのか
リースバックの家賃は、近隣の賃貸マンションなどと比較して割高に設定されるケースが少なくありません。これには以下の理由があります。
- 運営会社が負担する固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費や修繕積立金が家賃に含まれるため
- 将来的な建物の老朽化や不動産価格の下落リスクを運営会社が負うため
- 通常の賃貸に出せないような特殊な物件や築古物件でも住み続けられるという付加価値が含まれるため
リースバック家賃の具体的な算出方法
リースバックの家賃を理解するために、最も基本的な計算式を覚えておきましょう。以下の計算式によって、月々の支払額の目安を導き出すことができます。
月額家賃 =(物件の売却価格 × 期待利回り)÷ 12ヶ月
期待利回りの目安と地域差
ここで重要になるのが「期待利回り」という数値です。これは運営会社が設定する「目標利益率」のようなもので、物件の所在地や条件によって変動します。
| 地域・物件条件 | 期待利回りの目安(年率) |
|---|---|
| 首都圏・近畿圏の主要都市 | 6パーセント から 8パーセント 程度 |
| 地方都市・政令指定都市 | 8パーセント から 10パーセント 程度 |
| 郊外・過疎地・築年数が古い物件 | 10パーセント 以上 |
例えば、売却価格が 2000万円、利回りが 7パーセント と設定された場合、年間の家賃合計は 140万円 となり、月額では約 11万6000円 と計算されます。一方で、同じ 2000万円 でも利回りが 10パーセント になると、月額家賃は約 16万6000円 まで跳ね上がります。
売却価格と家賃の「トレードオフ」の関係
リースバックにおける最大の特徴は、売却価格と家賃が連動している点にあります。高く売れば売るほど、計算の元となる金額が大きくなるため、家賃も比例して高くなります。
売却価格別の家賃シミュレーション
利回りを 8パーセント と仮定した場合の、売却価格ごとの家賃目安は以下の通りです。
| 物件売却価格 | 年間家賃(合計) | 月額家賃(目安) |
|---|---|---|
| 1000万円 | 80万円 | 約 6万7000円 |
| 1500万円 | 120万円 | 10万円 |
| 2000万円 | 160万円 | 約 13万3000円 |
| 2500万円 | 200万円 | 約 16万7000円 |
| 3000万円 | 240万円 | 20万円 |
多くの方は「家を高く売りたい」と考えますが、高く売った結果、家賃が支払えなくなって退去せざるを得なくなっては本末転倒です。リースバックを利用する際は、売却価格という「入口」だけでなく、家賃という「出口までのコスト」を総合的に判断しなければなりません。
提示された家賃が「適正価格」か判断するポイント
運営会社から提示された金額が妥当かどうかを見極めるには、単に金額を見るだけでなく、以下の3つの視点でチェックしてください。
1. 複数の会社による比較査定
リースバックには公的な標準価格が存在しません。会社によって求める利回りが異なるため、同じ物件でも家賃に数万円の差が出ることがあります。必ず3社以上の見積もりを取り、売却価格と家賃のバランスが最も良い会社を選びましょう。
2. 付帯費用の有無を確認
月々の家賃以外に、家賃の数ヶ月分の「敷金・礼金」や「事務手数料」、「更新料」が発生する場合があります。また、家賃の中に固定資産税や管理費が正しく含まれているか、火災保険の負担はどうなっているかも確認が必要です。
3. 長期的な収支シミュレーション
例えば5年、10年と住み続けた場合、受け取った売却代金のうちいくらが家賃として消えていくのかを計算しましょう。あまりに家賃が高い場合、数年で売却益がすべて家賃支払いに充当されてしまう「持ち出し」の状態になってしまいます。
家賃を抑えるための具体的な工夫
もし提示された家賃が予算オーバーである場合、以下のような交渉や調整を行う余地があります。
一つ目は「あえて売却価格を下げる」ことです。売却価格を 100万円 下げるだけで、月々の家賃が数千円から一万円程度安くなることがあります。まとまった現金が今すぐ必要でない場合は、長期的な支払負担を減らすほうが賢明な判断となることもあります。
二つ目は「修繕義務の範囲を調整する」ことです。通常、賃貸物件の設備(エアコンや給湯器など)が故障した際はオーナーが直しますが、これを「借主の自己負担」とすることで、家賃を減額してもらう交渉が可能です。自分の家として長年住んできた愛着のある家であれば、設備の扱いに慣れているため、この選択肢も検討に値します。
リースバックを成功させるための注意点
家賃の金額以外にも、契約内容には細心の注意を払いましょう。特に「借家契約の種類」は非常に重要です。
「普通借家契約」であれば、借主が希望する限り住み続ける権利が強く守られます。しかし「定期借家契約」の場合は、契約期間が終了すると再契約が認められない限り退去しなければなりません。家賃の安さだけで選んだ結果、短期間で追い出されることのないよう、契約の形態を必ず確認してください。
まとめ:家賃と売却価格のバランスを冷静に見極める
リースバックの家賃相場は、物件価格と利回りという明確な計算式に基づいています。周辺の家賃相場とは異なるロジックで動いていることを理解し、自分にとっての「適正価格」を見つけ出すことが重要です。
将来の生活設計を見据え、無理のない家賃設定で、住み慣れた我が家での生活を継続できるよう、慎重に比較検討を進めてください。専門的な知識を持つアドバイザーや、信頼できる運営会社との出会いが、リースバック成功の鍵となります。
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